「経済的な事情で住宅ローンの支払いが困難になってしまった」「住宅ローンが残っている物件でも売却はできる?」とお悩みの方もいらっしゃることでしょう。
結論から言うと、住宅ローンが残っている物件は、「通常の手順で売却ができる場合」と「売却できない場合」があります。
ローンの残債が物件の売却額よりも低い「アンダーローン」と呼ばれる状態であれば、物件の売却代金でローンを完済できるため、通常の手順で売却が可能です。ただし、住宅ローンの残債が物件の売却額よりも高い「オーバーローン」と呼ばれる状態だと、ローンが完済できないため、通常通りの売却ができません。
ここでは、アンダーローン、オーバーローンの見極め方や、ローンが残っている物件売却の方法や手順について解説します。

アンダーローンとオーバーローンの見極め方は?

アンダーローンとオーバーローンを見極めるため、住宅ローンが残っている物件を売却する際には、あらかじめ、以下の3点を調べておきましょう。

① 住宅ローンの残債

最初に住宅ローンの残債がいくらあるのかを調べましょう。
住宅ローンの残債は金融機関から送られてくる「残高証明書」で確認することができます。残高証明書の発行は、金融機関によっても異なりますが、一般的に毎年10月末頃に行われます。また、銀行の窓口で残高証明書を発行してもらうこともできます。その際は、通帳や印鑑(届出印)、運転免許証などの本人確認書類を準備しておきましょう。

② 物件の売却価格

住宅ローンの残債が判明したら、物件の売却金額がいくらになるかを調べましょう。売却金額は、不動産会社に依頼すると査定をしてもらえます。
不動産会社によっては、「実際に売れる価格」ではなく「売却依頼を受けるための価格」を提示します。貴方の事情をよく理解して親身に相談に乗ってくれる不動産会社に依頼しましょう。

③ 物件を売却したお金でローンが返済できるか

物件の査定額が分かれば、そのお金で住宅ローンを返済できるかどうかの確認ができます。
物件の売却額が住宅ローンの残債より高いと「アンダーローン」となるため、問題なく物件を売却することが可能です。しかし、物件の売却額が住宅ローンの残債より低いと「オーバーローン」となるため、そのまま売却することができません。

オーバーローンの時の売却方法は2つ

物件の売却額が住宅ローンの残債より低い場合、預貯金などで返済する方法もありますが、資金に余裕がないとそれも難しくなります。
そこで、「住み替えローンを利用する方法」と「任意売却を利用して売却益を返済に充てる方法」の2つを紹介します。

住み替えローンを利用する

住み替えローンとは、物件を売却しても住宅ローンを完済できない場合に、新居の購入資金に現在の住宅ローンを上乗せして借り入れすることができるローンのことです。
住み替えローンには、一般的な住宅ローンよりも厳しい利用条件があります。住み替えローンを利用すると、新しい家の購入資金に、現在住んでいる家の残債も上乗せされます。しかし、金融機関は「新しく購入する物件のみ」にしか担保の設定ができないため、担保の価値以上に融資をするということになるのです。
そのため、住宅ローンを組む時以上に、十分な信用が求められるので、住み替えローンの審査は厳しくなります。
住み替えローンを利用するには、少なくとも、次の条件を満たさなければなりません。

  • オーバーローンである
  • 預貯金などで住宅ローンの残債を返済できない
  • 現在の家の売却と新居の購入を同時期に行う
  • 住宅ローンの延滞がない
  • 借入時に満20歳以上70歳未満の方までで、かつ完済時に満80歳以下である

住み替えローンを利用すると、全体の借り入れ金額が高額になるので、毎月の返済額が大きくなってしまいます。そのため、継続的に返済する資金力が必要になる点も考慮して、住み替えローンを利用するかどうかを検討するのが良いでしょう。

任意売却を利用する

任意売却というのは、売却後に住宅ローンが残ってしまう物件を金融機関と話し合いをして同意を得たうえで売却する方法のことです。
通常、住宅ローンの残額を全額用意できない場合、金融機関は物件の売却を認めてくれません。そういった場合、一般的には「競売」となります。競売とは債権者が裁判所を通じて債務者の不動産を文字通り「競りにかけて売却」することです。競売の場合の留意点は普通に売却するよりも安い金額で売却になってしまいやすい、ということです。近年(2022年2月時点)では、不動産需要の増加で競売価格も上昇傾向にありますが、それでも任意売却よりはどうしても安くなります。
売却価格が安くなると言うことは、債務者の住宅ローン残債がより多くなり、金融機関としては回収金額が少なくなってしまうということです。つまり、競売の方が任意売却に比べるとデメリットが大きいため、任意売却することを認めてくれるのです。
また、任意売却の後に残った住宅ローン残債については、話し合いの上、今後の生活状況に応じて支払うことになります。

任意売却と競売の違い

任意売却は、売却後に住宅ローンが残ってしまう物件を金融機関の同意を得た上で売却する方法、という説明をしました。
それに比べ、競売は債務の法的処理の一つで、一般競争入札で落札者を決めます。債権者が不動産の売却を裁判所へ申し立て、それが認められた場合に、強制的に売却する制度です。
売却に際しては、オークション方式で行われ、最も高額な札を入れた人に購入権限が与えられます。市場価格に比べて低価格で落札されるのが一般的です。

任意売却のメリット

任意売却をすることによってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、任意売却のメリットを4つ紹介します。

① 住宅ローンの残債が少なくなる

任意売却は競売に比べると高い金額で売却されるため、売却後に残る住宅ローンが少なくなります。
なぜ、競売は安くなるかというと、競売の場合は、購入する側にとって以下のようなリスクがあるからです。

  • 事前に内見ができない
  • 住人の立ち退き時にトラブルが起こる可能性がある
  • 室内に放置された物の撤去に多大な費用が発生する可能性がある

これらを考慮した上で購入するため、実際の売却価格が市場価格より大幅に低くなるのです。
また、このようなリスクがあるため、一般の人が競売に参加することは多くありません。主に不動産会社やサービサーなどが、自社で売却する不動産の仕入れとして利用する場合が大半を占めています。よって、どうしても価格が安くなるのです。

② 残債を無理なく返済できる

任意売却が終わったあとの残債の支払い方法については、①一括で支払う、②分割で支払う、③支払える範囲で支払うという3つから選択します。一括もしくは分割で支払うというのはイメージができると思いますが、③の方法はどういうことでしょう。
この方法は、任意売却が終了すると金融機関から渡される 『返済計画表』に、生活状況を記入して、毎月、支払える範囲で返済するというものです。「それでいいの?」と思われるかもしれませんが、実際にこの方法でお支払いをする方が多く見られます。

③ 税金の一部を経費として認められる

任意売却を選択される方のほとんどは、住宅ローン以外にも、固定資産税など税金の滞納があります。税金を滞納すると、役所はその不動産に差押え登記を行い、そのことが登記簿謄本にも記載されます。
こうなってしまうと、任意売却だけでなく通常の売却もできません。しかし、任意売却を行うと売却代金から滞納している税金を支払ってもらえるのです。

④ 遅延損害金が少なくなる

通常、住宅ローンを滞納してから競売になるまでの期間は約1年間です。任意売却は競売の前に行わなければならないのですが、その間に滞納している住宅ローンに対して遅延損害金が発生してしまいます。
ほとんどの金融機関では、14.6%もの遅延損害金が発生するため、仮に2500万円の住宅ローンなら、遅延損害金は年間365万円にも及びます。一日早く売却するだけでも、1万円の損害を防ぐことができることになるのです。

任意売却のデメリット

反対に、任意売却をすることによって生じるデメリットもあります。ここではデメリットを4つ紹介します。

① 連帯債務者や連帯保証人の同意が必要

任意売却を行うには、連帯保証人の同意が必要です。決済に同行してもらい、抵当権を抹消するための書類に署名、押印しなければなりません。
また、住宅ローンの残債が多い場合は、連帯保証人にも支払い義務が生じるので、今後の支払いについてしっかりと説明する必要が生じます。

② 債権者(=金融機関)の承諾価格が高い場合がある

任意売却は買ってくれる人がいて始めて成立する取引です。そのため、買主が納得して買ってくれる金額でなければなりません。つまり、買主が購入してくれる金額で債権者の承諾がなければ、任意売却は成立しないのです。
より市場価格に近い金額で債権者に承諾してもらえるか、その金額で購入希望者が現れるか、という2つの点が任意売却の成否を決める重要なポイントでもあります。

③ 個人信用情報に延滞履歴が記録される

個人信用情報に延滞の登録をされると一般的に5年〜10年間はその記録が残ります。いわゆるブラックリストと呼ばれるものです。
延滞の記録が残ると、新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができなくなります。もちろん、任意売却をしても個人信用情報に延滞の記録は残ってしまいます。
そうなってしまうと、一生ローンが組めないと思っている方もいるようですが、5年〜10年が経ってブラックリストから外れると、またローンが組めるようになります。

④ 引っ越しを早くしないといけなくなる可能性がある

競売にかけられて退去させられるまでの期間は、住宅ローンを滞納してから約1年程度です。任意売却をする場合はその間に取引を成立させなければならないため、買主が早く見つかると、その段階で引っ越しをしなければならないということがあります。よって、競売と任意売却を比較した時に、競売の方がその家に長く住める場合があるのです。
しかし、任意売却の買主に相談して引っ越し時期を決めることもできます。競売の場合は、強制的に引っ越しをしなければなりませんが、任意売却を行う場合で引っ越しの時期に希望があれば、あらかじめ買主に相談をするようにしましょう。

まとめ

ここでは、ローンが残っている物件の売却方法について解説しました。
まずは、通常の手順で売却できるかを知るために、物件を売却した時に「アンダーローン」になるのか、「オーバーローン」になるのかを調べます。オーバーローンの場合は、住み替えローンを利用するか、任意売却をする方法で売却をすることができる可能性があります。
住み替えローンの利用や任意売却はメリットがありますが、デメリットもあるため、慎重に検討することが重要です。任意売却を行いたい場合は、金融機関に相談の上、任意売却を行ってくれる不動産会社に相談をしましょう。
一誠商事では、不動産売却査定だけでなく任意売却、賃貸による不動産活用定についてもご相談を承っておりますので、お気軽にご相談下さい。

ISSEI

記事の監修者:一誠商事編集部

一誠商事株式会社が運営する情報サイト編集部。

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